第134回:オーギュスト・エスコフィエ料理の再現
現代フランス料理の祖、故オーギュスト・エスコフィエ氏。彼の功績は料理の創作だけではなく、調理法の合理化、料理場の革新的な設計や衛生管理、料理人の労働環境改善や地位向上に尽くしたことなど多岐に渡り、当時一流レストランで存在しなかったコース料理を考案した料理人。今回は、彼の料理を再現した、セルリアンタワー東急ホテルの総料理長、福田氏をゲストに迎え、歴史とともに振り返った。
進化した宮廷料理
――現在のフランス料理の型を作ったといわれるエスコフィエ料理を再現していただきましたが、これ、相当な労力がかかったと想像に難くないのですが。
福田:はい(笑)。メニューの構成はアミューズがあり、オードブルがありということで進んでいくんですが、実はこの形、スタイル自体を確立したのがエスコフィエだったんですね。ルイ14世太陽王と呼ばれた方=王様に献上する料理から、だんだん一般的に食べられる量に合わせ、コースに仕立てたことがはじまりです。それを脈々と100年以上前から受け継いでいるんですね。昔は、飛行機ではなく船の移動が多かったものですから、大皿でたくさんの方たちに何十種類という料理を作るより、食べられる量を限定して、順に提供する斬新なスタイルは、当時かなり先進的な改革の一つだったと思います。
料理人のバイブル「ル・ギード・キュリネール」
福田:今回再現するにあたり、私たちがいつも大切にしているエスコフィエが確立した指南書「Le guide culinaire (ル・ギード・キュリネール)」という辞書があるんです。この本を紐解いていくと、例えばアミューズでお出ししたブランダード。これはどちらかというとおふくろさんの肉じゃがのような料理ですが、ある程度はレシピで分量化されているものの、そこに写真は一切載っていません。しかも、すべてフランス語であとはその入っている食材が記載されているだけ。分量も記載していないものもあったりします。大体これぐらいの量っていうような、そんな書き方をしているものもあります。それを私たちが再現していくんですが、「たぶんこういう形で、このやわらかさで、この香りを漂わせて作ったんであろう」と想像を膨らませ、先人から口伝えなどで教わってきたんですね。今のように動画サイトや丁寧に写真付きで書かれたレシピ本などとは全く違う手法で取得してきたんです。